制約やストレスは組織の成長を阻害する?

2020/01/14 ブログ
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~制約はイノベーションの触媒~

昨年末、「制約があると創造性やイノベーションが促進される」(ハーバード・ビジネス・レビュー)という記事を目にした。

制約やリソース不足は、イノベーションの阻害要因といわれている我々の常識は間違いであり、イノベーションは適度な制約があるほうがうまくいくというのだ。

記事では予算を削り、厳しい期限を設け、より厳しい性能基準を設け、これらの制約を武器にして、自らのチームにイノベーションをもたらそうと説く。

曰く、「成果とリソースに関する制約を緩やかにし、プロセスに関する制約を厳しくする」

「適切なコミュニケーションとフィードバックによって、制約にたいする積極的取り組みを引き出す」「課題の難度によって、制約の適用に柔軟性を持たせる」。

苦戦したときには、「状況を点検し、制約を問題の元凶としてやり玉に挙げるのではなく、それを創造的な課題と位置づけよう。制約があるおかげで努力を傾ける対象を絞り込み、方向性を見出しやすくなるという利点をメンバーに伝え、試練に立ち向かうよう促す」というのだ。

チームのリーダーに対するこの助言。皆さんは、「そんなにうまくいったら苦労はない。」が、大方の皆さんの感想だろう。

実際にその通りなのだ。そんなにうまくいったら苦労はないのだ。が・・・。

~ストレスは考え方次第~

私が、この記事のタイトルを見たときに思い出したのは「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」(ケリー・マクゴニガル・著。神崎朗子・訳。大和書房 Kindle版)だ。

この本は、「健康にも精神にも悪いと、諸悪の根源のように言われるストレスも、受け止め方によって、良い効果を得ることができる」と説く。

ストレスのない生活、すなはち、いつも楽しい生活とは、どんな結果をもたらすのだろうか。著者は「ひたすら快楽のみを求め、痛みを避けようとする人には、深みや意味に欠けた、仲間のいない人生しか手にはいらない」と断言する。

「ストレスとは、自分にとって大切なものが脅かされたときに生じるものであって、ストレスと意義とは密接な関係にある」というのだ。逆に、ストレスを感じたときに分泌される

コルチゾール、オキシトシンは炎症を抑えて、自律神経系のバランスを整え、DHEA(神経成長因子)は、神経の可塑性を高め、脳がストレスの経験から学ぶのを助けるのだそうだ。ストレスを感じたときに私たちの体の中では、きちんと対処し、学習するための働きが起きたいるということなのだ。「過去の経験を受け入れようと思った人たちは、幸福感が増し、レジリエンスが強化され、うつ状態になりにくいことが分かった」そうで、逆に「ストレスを避けようとしていると、「つながり」や「帰属」の意識が薄れていくことが分か」ったというのだ。

つまり、ストレスを正しく受け入れると「わたしたちが人間らしくふるまい、人とつながり、周囲の世の中と関わっていくための助けにもなる」のだ。

皆さんは、「ストレスがそんなにいいものなら、なぜ、ストレスが原因で病気になったり、自殺したり人まで出てしまうのか?」と、反論するだろう。

~神は乗り越えられない苦難をあたえない~

確かに、その通りだ。先の、HBR誌もそうだが、マクゴニガル女史も制約や、ストレスを賛美しているわけではない。しかし、順風満帆の日ばかりではなく、様々な難関は避けることなく降りかかってくる。しかし、先人たちは力を合わせて乗り越えてきたのであり、私たちにはその力が備わっているということなのだ。

キーワードは、「わたしたちのつながる力」。この力を、会社のなかに作り上げていくのはそう簡単ではない。であるからこそ、勝ち残る力になる。逆境に強い組織づくりは、AIやIoTなど人類が踏み入れたことのない次元の社会に生き残るための必須の条件になる。ただし、簡単ではない。だからこそ価値があるのだ。早速取り組まなければならない。