新型コロナウィルス、日本は頭脳で貢献。即刻!!

2020/04/11 ブログ
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イスラエルの歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリのTIMEへの寄稿文がWeb河出に掲載された。(http://web.kawade.co.jp/bungei/3473/:柴田裕之・訳)

彼は、「サピエンス全史」など世界的ベストセラーの著者として、我々人類の誕生から現在まで、社会を鋭く分析してくれる。

この寄稿文で、今回の新型コロナウィルスに翻弄されているかに見える世界を、「私たちの世代にとって最大の危機かもしれない。今後数週間に人々や政府が下す決定は、今後何年にもわたって世の中が進む方向を定めるだろう。」と評している。

確かに、SARSやMERSに比べ、感染者や死亡者の数、感染国数は比較にならない規模となっていて、むしろ、中世ヨーロッパで猛威を振るったペストを思い起した人も多いに違いない。

私は、今、非常事態宣言が出された千葉県の自宅でこの文章を書いているが、このパンデミック対応の当事者であるWHOの事務局長は、自身に対する台湾(の一般市民?)からの誹謗中傷に対する台湾政府の対応を非難する声明を出していた。アメリカのトランプ大統領は、発生当初の楽観的な予想を棚に上げて、流行拡大の原因は中国の情報隠しであると非難している。一方の中国は、感染封じ込めをことさらアピールして、発生当初の情報隠しには知らん顔を決め込んでいる。

また、世界の工場、中国の機能不全によって、マスク不足は深刻で、国家間でのマスク争奪戦、というより、略奪行為がまかり通る事態となっている。

ハラリ氏は、「私たちは、ナショナリズムに基づく孤立か、それともグローバルな団結か、という重要な選択を迫られている。」と述べる。

現代は、ペストの時代ならずとも、SARSやMERSの時とも、くらべものにならないスピードで人や情報が世界中を駆け巡る。新型コロナウィルスも、人の動きにのって、瞬く間に全世界に拡散した。

世界の指導者は、ナショナリズムやセクショナリズムによる孤立に向かっているように見えるが、ハラリ氏は、「私たちは何をおいても、グローバルな形で情報を共有する必要がある。・・・こうした情報の共有が実現するためには、グローバルな協力と信頼の精神が必要とされる。」と説く。

わが日本は、何ができるのだろうか?

今朝、ノーベル賞受賞者本庶佑先生が、テレビに出演しておられたが、我が国には、頭脳がある。先生の専門分野である免疫学は、阪大の岸本忠三先生や審良静男先生というノーベル賞級の頭脳が綺羅星のごとく輝いている。

我が国の研究開発予算は約1兆円である。本庶先生は100憶円とおっしゃっていたように思うが、1兆円の100億円は1%。このお金を、ワクチン、治療薬の開発に投入することができれば、わが日本の国際的役割を十分に果たすことができる。

お役人は、「既に、予算は成立しており、全て使い道は決まっている。」と、「補正予算が現在、鋭意、編成作業中です。」とおっしゃるだろう。その補正予算の成立は、早くても5月末、6月になるだろう。役人のスピード感だ。(私自身も、役人だったので、よくわかる。)

しかし、国には、科学技術関係予算には、競争的資金という、予算成立後に、コンペ形式で配分される仕組みの予算がある。2019年度では当初予算7,200憶円、補正予算で1500億円が計上されている。2020年度においても、同程度か、それ以上の予算が計上されているはずである。この予算は、実情、配分が大まかに決定されていて、既に既得権的な運用がされているのも事実であるが、ペスト以来の世界的危機を前にして、どちらが重要かといえば、おのずと明らかであろう。この際、既得権をぶち壊して、本来の競争性、機動性を取り戻す意大手術のきっかけにするのもよいかもしれない。

各省の競争的資金の1.4%で100憶円になる。14%といえば、補正予算財源として財務省に召し上げられる金額の1/10以下である。

この予算が使うには、各省の予算班の担当が、主計局の担当補佐に実行予算協議を行えばよいのだ。その気になれば、来週にでも使用可能になるはずだ。さらに必要ならば、編成中の補正予算に追加経費を計上すればよい。

ハラリ氏は、「この嵐もやがて去り、人類は苦境を乗り切り、ほとんどの人が生き永らえる――だが、私たちは今とは違う世界に身を置くことになるだろう。」とも言っている。

世界の指導者たちは、「今とは違う世界」を見据えて、今は孤立の道を選んでいるのだろう。その世界が、彼らが描くパワーゲームの世界になった場合にも、日本の頭脳の役割は大きく、貴重である。