香港国家安全維持法の施行②~政治編~
新型コロナウィルス世界の感染者数は1,240万人、死者数56万人(7月9日現在)と感染拡大が続いている。発生源は中国武漢の市場とされているが、当の中国の感染者数は8万5千人、感染拡大を抑え込んだとして、実は、発生源であることを利用して戦略的に備蓄していたといわれるマスク、防護服を各国に供与したり、感染サンプル収集の時間的アドバンテージを活かした治療薬やワクチンの早期開発をアピールするなど、コロナウィルス対策でイニシアティブを握ろうとしている。
一方で中国は、この時期に合わせたように周辺地域に対し、領土的野心を露わにしている。
領土的拡張主義は、マルクスのインターナショナル運動にさかのぼる共産主義のDNAなのだ。従って、中国の領土的野心は、共産党政権が続く限り消えることはない。従来より、力の空白をとらえ、南シナ海における軍事拠点化による実効支配の強化は着実に進められ、ブータンやミャンマーなど内陸近隣各国でも侵略行為を繰り返している。
4月に続き、6月10日には、南シナ海でベトナム漁船が中国船の体当たりを受け、転覆させた事件が波紋を呼んでいる。中国の強硬姿勢にフィリピンなど周辺国やアメリカなど各国が懸念を表明するなか、逆に、南シナ海各海域に中国の行政区を設定したりと力任せの一方的行為をエスカレートさせている。
印パ中の領土紛争の地カシミールでは、6月15日中印両軍の衝突が発生、双方に60人以上の死傷者が出る事態になっている。
我が国との関係においても例外ではなく、尖閣諸島での領海侵事件数を壮大させ、沖ノ鳥島近海のEEZ内での、資源調査事件が確認されている。傍若無人ともいえるこれらの行為に対し、「いじめ」という言葉で非難しているが、このように表現するしかないくらい短絡的に見える行為が、世界がコロナウィルスで混乱しているすきを狙うように、頻発している。
しかし、中国は「ジャイアン」ほどお人よしではない。香港での国家安全法の施行も、コロナウィルス対応も、いじめも、中国の国際戦略の一環なのだ。
そもそも、ベトナムとの関係では、それまでパラセル諸島の東半分を占領していた中国は、ベトナム戦争末期の1974年友軍であるはずのベトナム領有地域に侵攻している。フィリピンが領有していたスプラトリー諸島に侵攻したのは、米軍が、スービック基地(フィリピン)から撤退した3年後の1995年のことだった。
昨年、香港で起きた大規模な反対運動は、逃亡犯条例改正※案がきっかけとなっている。この法律が成立すると、一国二制度が崩壊するとして発生し、廃案にまで追い込んだ大きな渦も、コロナウィルス、そして、それに続く国家安全法で消し飛んでしまった。
このブログを書くために調べものをしていると、国家安全法が香港に及ぼす一番大きな問題に行き当たった。前回のブログでも紹介した遠藤誉氏の記事だ。
香港の裁判官17人中15人が外国籍(イギリス、アメリカ、カナダまど英連邦国)と定められていて、これが香港返還後の自由を担保する機能を果たしていたのだが、今回の、国家安全法では、中国の安全を侵害すると認定した裁判官の資格をはく奪する規定が盛り込まれたということなのだ。裁判官の任期を1年に短縮するとともに、「裁判官が国家安全を侵害するような言動をした場合には、資格をはく奪する」という規定が盛り込まれているとのことなのだ。
この法律が施行されると、香港の民主活動家の香港脱出や活動停止にニュースが相次ぎ、一般市民の間でも、移民を検討する人が増加しているとのこと。
社会主義国は、往々にして知識人を排除する場合があるが、頭脳も体も流出しそうな香港はどうなるのだろうか。
香港国家安全維持法の施行③~経済編~に続く
※逃亡犯条例改正:香港が結んでいる犯罪人引渡し協定に中国を加えようとするもの。香港市民が中国当局の取り締まり対象になる恐れがあるとして反対運動がおきた。きっかけは、台湾で殺人事件を起こした容疑者を台湾に移送できなかったことだった。