アメリカと中国 2つの国の出来事に学ぶ

2021/01/09 ブログ
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~アメリカ議会に市民が突入・香港では・・・~
世界中がコロナ禍で揺れ、収まる気配は見えません。我が国では2度目の緊急事態宣言が出されました。そんな中、アメリカでは、大統領選挙結果を、最終的に決定する両院総会(合衆国議会合同会議)開催中の議会に、トランプ大統領支持派のデモ隊がなだれ込み、審議がストップしたという報道が流れました。その混乱の中で4(翌日に5人に増えた)人の方が亡くなり、そのうちの女性一人は銃で撃たれていたとのこと、さらに、そのデモ隊をあおったのは、何あろう、トランプ大統領自身だったというのですから・・・。
国の内外からは轟轟たる批判の嵐で、議会からは罷免の声も上がっているようです。
この事態に、中国の報道官は「立法会へのデモ隊乱入は、ワシントンでの出来事よりも深刻だったが、デモ隊は1人も亡くなっていない。」と発言したとか。
民主主義を謳うアメリカより一党支配を批判される自国、中国の正当性を訴えた形になったようです。
斯く言う中国は、夏のコロナ騒動に国家安全法を施行したように、感染再拡大の今、人権活動家を大量逮捕して、香港の民主主義を抹殺しようとしています。とはいっても、振返って見れば、「Black Lives Matter」運動を、軍隊で制圧しようとしたトランプ大統領と、大差はなさそうに見えます。
~そもそも民主主義は万能ではない~
成人国民全体に選挙権があたえられる(「普通選挙」)現在の民主主義になったのは、第1次世界大戦後で、100年ほどしかたっていません。第1次世界大戦は、それまで武士や貴族によって戦われていた戦争が、初めて一般大衆が駆り出された全体戦争として戦われた戦争でした。産業革命によって、大量に必要となる労働力の供給源としての役割も含め一般大衆が国力に大きな影響を及ぼすことになったことが現代民主主義の大きな要因であるのです。アメリカの独立戦争やヨーロッパに吹き荒れた革命の嵐は、有産階級の台頭によるもので、選挙権は納税額によってきめられていました。その前には、王侯貴族が、権力を握る封建時代や絶対王政の時代がありました。古代ローマ市民与えられた選挙権にも、市民としてのいろいろな義務が課されていましたし、国を守るという『栄誉』も与えられていました。
こんな風に、その時代に最も力や影響力を持った勢力(社会階層)が社会を動かしていく仕組みをつくりだしてきたのが歴史といえます。
ですから、理想的に正しい仕組みが存在するわけではありません。少なくとも、今の段階では・・・。何故なら、時の勢力の都合の良いように、ある意味、エゴが仕組みの中にビルトインされてしまうからです。
民主主義といわれるこれまでの仕組みでも、ギリシャ時代の「陶片追放」、ローマ時代の「パンとサーカス」、フランス革命の「ギロチン」など、間違いと隣り合わせです。あのナチスも、世界一民主的だとされたワイマール憲法のもとで、合法的に権力を奪取し、ホロコーストにまで至ったのです。
~アメリカと中国の違いは~
しかし、この様に形作られた社会の仕組み、現在の民主主義にも救いはあると思うのです。それは、人々の合意形成の結果として生み出されてきたという出自です。今回の、トランプ大統領の行動に、身内である共和党からも大きな批判や反省の意見が出ていますし、彼が民衆のデモに軍隊を出動させようとしたときに、エスパー国防長官は反対しました。同胞意識、倫理観という最高権力者をこえる上位概念が支配しているのです。
方や、中国、この国の歴史は、中原をいろいろな民族が支配するというものでした。現在の支配者「中国共産党」も、歴代の支配者と変わりはありません。ただ、その支配域を嘗ての支配者のそれにまで広げているだけです。中国の歴史は、ざっくり言えば、新たな支配者は、それまでの支配民族を追い出し、または、殺戮する歴史でした。支配者は、被支配者と共有すべき上位概念などというものを持つ必然性はなかったのです。天安門事件でも、今回香港におこっている一連の事件も、時の権力を規制するなにもの現れないのです。
中国が、香港の出来事とワシントンの出来事を並べて論評していますが、起こっていることの本質は全く異なるのです。
但し、そのように主張するためには、気を付けなければならないことがあるのです。民主主義は、往々にして間違うということ、また、私たちは、ほとんどいつも愚かであるということです。私たちは、私たちの愚かさを指摘してくれる何かの存在を意識する必要があると思うのです。
だからこそ、責任をもって社会に貢献してくれている政治家の人たちや医療関係のかた、潤いを与えてくれる芸術家・・・いろんな人がありがたく、感謝して学びたいものです。
といっても、すんなりとはいきません。そこが愚かである所以なんですが・・・。